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第111回 はたらく車、働くひとびと

鎌田歩氏の描くカッコイイ働く車・働く人たちが登場するおしごと・のりもの絵本4冊をピックアップしてみました。

「なんでもあらう」 福音館書店 2014年5月発行 32ページ
鎌田歩/作

けんちゃんの自転車、よごれている。きたないままだとあぶないよ、と教えてくれたおじさんがいました。
きたないとどうして危ないのかな?
汚れた車輪やチェーンだと、ブレーキがきかなくなったりチェーンがきれたりするかもしれないよ。きれいすることで安心して自転車に乗ることができるんだよ。
最初に登場する働く車たちは、水をまく散水車、ごみを吸い込むスイーパー、ごみを運ぶダンプトラック。3台一組で道路を洗います。道路がきれいだと安心して道路を走ることができます。
お次は、電車を洗うおしごとです。電車を洗うための線路には、ガソスタにある洗車の機械のようなものがあります。そして機械のブラシでは届かない正面や連結部分や窓枠をスポンジやブラシを使って丁寧に人があらうのです。
高いビルの窓ガラスや道路の標識も洗います。きれいにしないと傷んでしまうんだ。
きわめつけは、飛行機!飛行機は真夜中に洗うんです。やはり飛行機も洗うんですね。洗うにはおうちで使うひと月分ほどの水が必要ですが、故障を見つけやすくするため、整備のために、汚れをしっかり落とすことが必要です。
最後の仕上げに、働いたみんなでお風呂にはいります。ゆったり湯船につかってゆっくり休んでくださいね。

「そらのうえのそうでんせん」 アリス館 2018年12月発行 32ページ
鎌田歩/作

こちらもおしごと絵本です。事故がおきないよう怪我しないよう安全に仕事をするため、準備、確認、慎重を期して行動します。
送電線は、発電所で作った電気を、遠くに届ける仕事をしています。その送電線を支えるのが送電鉄塔といいます。
その送電線を点検整備をするひとたち、「ラインマン」。
装備品とその解説ページの「ラインマン図解」がかっこいいです。
どうやって鉄塔に登るか、古い部品を交換していくか、じっくりみせてくれます。
鉄塔のてっぺんは、地面から50メートル。20階建てのビルくらいの高さだそうです。足がすくみますね。
送電線に宙乗り器(ちゅうのりき)をかけて、鉄塔から鉄塔を移動して古い部品を交換していきます。(途中でトイレに行きたくなったらどうするんだろうという疑問がわきました。ごめんなさい。)

「まよなかのせんろ」 アリス館 2016年11月発行 32ページ
鎌田歩/作

こちらもおしごと+のりもの絵本、今度は電車のはしる線路をなおす車両「マルチプルタイタンパー」が主人公。
夜、お客さんがおりた最終電車が車庫へ帰っていきます。
そのとなりの留置線に、大きな車両がとまっています。線路のゆがみをはかり、レールをはさんで持ち上げて、線路にしかれた石ころ=さいせきを整えて固め、再度線路のゆがみをチェック というたくさんの機能のある便利な車両「マルチプルタイタンパー」があります。マルチタイタンパーが通ったあと、作業員さんたちが線路に残ったさいせきを掃除し、もう一度人間の目でゆがみなどを確認し、整備作業が完了します。
毎晩、電車の走らない真夜中に、作業してくれています。だから安心して電車に乗ることができるんですね。力強く働く大きな乗り物はやはりかっこいい。

「はこぶ」 教育画劇 2014年1月発行 32ページ
鎌田歩/作

これは、しごと絵本ではないですね~、なに絵本っていうんでしょうか。進化絵本?のりものはたくさん登場します。
遠い遠い昔の時代のひと(旧石器時代あたりでしょうか)がリンゴをはこんでいます。手にいっぱいもてるだけをはこぶ。
いれものに入れたら運びやすくなるね。
ひもでしばって棒につるしたらいれもの2個はこべるぞ!
ふたりがかりなら、もっとたくさんはこべるね。
背中にかつぐ道具を作ったらもっとたくさんはこべるよ。
牛の背中に乗っけてはこんでもらおう。
牛にひいてもらう荷車ができました。
雅な人々をはこぶ素敵な牛車も。

どんどん、進化していきます。
自転車やバイクに乗せて運ぼう。
おそばやラーメンをこぼさず運ぶ工夫もできました。
車が登場。三輪自動車、トラック、バス。
火事に出動する消防車、具合の悪い人を運ぶ救急車、安全に燃料を運ぶタンカー、車を運ぶ車、コンテナを運ぶ列車・・・など用途もいろいろ。かたちもいろいろ。

いろんなものを、たくさん、遠くへ、急いで、運びます。
どんどんどんどん、進化します。
あれれ、途中で山崩れが発生。荷物が運べない状況に。ここで絵本の流れがいったん止まるのが面白いですね。
山崩れをなおし、ジャリを運び、道路をなおす作業員さんや働く車たちが登場。
どんどんなおし、どんどん道路を作り、トンネルを掘って、橋をつくり、遠くへ続く道ができていきます。
技術が進化していきます。遠くへ行ける飛行機や大容量を運べる貨物船が登場。海の上も空の上も。
遠くへ、遠くへ。急いで、急いで。運べ運べ。
宇宙へだって届けるさ!と、最後は空へ向かってロケットが飛び出します。このシーンは、迫力ありますね。宇宙飛行士にリンゴを届けます。おいしそうにリンゴを食べる宇宙飛行士がいいです。

後半、知識・文化・技術が発展し、たくさんの車が登場します。ページの左から右へせわしなくどんどん運ぶためにみっしり描かれた乗り物に少し不穏な空気を感じてしまいます。作者の鎌田さんは乗り物がとってもお好きなのはたくさん描かれた乗り物から感じますが、反面、犠牲にしてきたものがあることを訴えていると感じます。遠い場所で作られているものを買うことができたり遠くへたくさんの人々を運べたり、短時間で遠くへ行けたりと、確かにいろいろ便利ですけれど。否定はできませんけれど。機械や技術は発展したけれど何か置き去りにしたものがありそう。・・そんなこと言ってないで絵本を楽しめばいいのかもしれませんけど。
「子供の頃、乗り物がたくさん書かれていたあの楽しい絵本、大人になって読み返してみたら、こんな仕掛けがあったんだとわかる絵本」なのかなあとおもいました。未知の宇宙空間に滞在する宇宙飛行士のために届けられたリンゴに喜ぶ笑顔、これこそが「運ぶこと」の目的であってほしいとおもいます。

鎌田歩氏の絵本は、擬音語が描かれ漫画風で見やすいです。たくさんののりものがしっかり描かれて、登場人物たちもかわいらしい。特に「なんでもあらう」のぶしょうひげのおじさんの絵がわたしは好きです。ほかにも楽しい乗り物絵本をたくさんかいておられます。