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第121回 カエルがガイドの小さな生き物たちの探検ツアー

「あまがえるりょこうしゃ トンボいけたんけん」 福音館書店 2004年6月発行 32ページ
松岡たつひで(松岡達英)/作

あまがえるがツアーガイドをやっています。今回の探検場所は、あまがえるりょこうしゃ建物の真ん前にあるトンボ池。すごく近いなあ~、探検といえるのか、というつっこみは意地悪ですね。
にんげんが捨てたペットボトルを改造して作ったボートに乗ります。動力は足こぎ式、ハンドルで舵も動かせられるし、窓を丸くくりぬいたりと工夫があってかっこいいですよ。ペットボトルは透明なので、水の中ものぞきこめるのです。お昼のおべんとうつきでツアー料金500円てのがちょっとリアル。安いのか高いのかちょっとわからないけど。
探検にでるのは、陸で暮らす生き物、カタツムリ・ダンゴムシの夫婦・テントウムシさん。カエルがガイドなのは、陸も水中もいけるからだろうとわかるのですが、ツアー参加者が、すごく人気のある生き物たち、というわけでない(なんて言ってごめんね)彼らをチョイスしているのがなんだか面白いです。ペットボトルボートに乗船可能なサイズゆえの選択かなあ? ガイドのあまがえるさん以外は、生き物がかなりリアルに描かれています。虫が苦手なわたしはちょっと怖いのですが、さあ、あまがえるさんがペダルを漕いで出発です。

コオイムシ、ミズスマシ、マツモムシ、ミジンコ、タナゴ、アカザ、メダカ・・たくさんの生き物が池の中で生きています。絵の横に生き物の名前が書かれてわかりやすいです。
池の中も弱肉強食の世界です。トノサマガエルがゲンゴロウ・タイコウチなどの虫に襲われています。助けてあげたいけれど、それはだめ、自然の摂理なのでしょうがないのです。肉を食べなければ生きていけない生き物から食べ物を奪うことはできません。楽しいことだけではなく、厳しい自然の姿も描かれています。
お弁当休憩をとって、ガマやイグサのしげる林のようになった場所へ。ハッチョウトンボをながめます。とても小さいアカトンボです。
そこへ大型のトンボのギンヤンマがあらわれました。とても大きく描かれていて、こわいです。空を飛ぶ生き物を捕食しますから、小さな生き物たちからすると、脅威なのですね。あまかえるが隠れるようみんなに大声で注意していてどきどきします。小さな虫の気持ちがおおいに味わえます。小さな生き物には優しく接してあげてほしいという作者の生物への愛情を感じますね。

今度は、池の底から救援を求める声が。にんげんが池に仕掛けた罠につかまっているヤモリ・ナマズ・ドジョウ・フナたちが泣き叫んでいます。なんとか助けてあげたいアマガエルがトノサマガエルの長老に相談します。目がぎらぎらして強くて怖そうなライギョに援助を求め、ハリガネとひもで作られた罠を壊してもらい、全員逃げることができました。食べる気まんまんなライギョには気の毒でしたが。
探検っていえるのかなんて、冒頭でつっこみましたが、いやいやなかなか刺激的でした。虫がたくさん描かれていますので、虫嫌いさんにはちょっとこわいかもしれませんが、豊かな自然界のそのままの姿が描かれていて良い絵本とおもいます。

あまがえるりょこうしゃのシリーズは現在、3冊発行されています。
「もりのくうちゅうさんぽ」紙飛行機で、空へ。
「ゆきやまたんけん」冬の森を探検です。てんとうむしの防寒具がおもしろい。乗り物がすごくグレードアップ。ちなみにあまがえるさん、結婚しています。
空からの観察、冬の山を観察、と様々な場所を小さな生き物の目線での探検。以後も続けばいいなーとおもう楽しいシリーズです。