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第132回 ともだちとながめる夕日っていいよね

「ぬけちゃった(児童図書館・絵本の部屋)」 評論社 2017年7月発行 32ページ
スティーブ・アントニー/作 せなあいこ/訳
原著「UNPLUGGED」 Steve Antony 2017年

表紙の四角いロボットがビビちゃん。三角・丸・四角のボタンのような模様がついていて、なんだかノスタルジックな気持ちになるボディ。レトロフューチャーっていうんでしょうか、懐かし愛らしいですね。
ビビちゃんは、毎日コンピュータにつながって、音楽をきいたり、ゲームしたり、行ったことのない場所をながめたり、たくさん遊んで楽しく過ごしています。
ある日、コードにつまづいてプラグがぬけちゃった。そして階段をころげおち、おうちのそとに飛び出して、草のはえた坂を転がって、森を抜け、川に流されました。池田屋階段落ちより激しい勢いです。レトロなフォルムだけど精密機械らしきなのにすごく頑丈!ビビちゃんは精密機械の鏡です。
広い空、青々としげる草木、お花の咲く水辺で、「あたし、おそとにいる!」と気がついた。ずいぶん遠くへきたもんだ。ころげるビビちゃんをおっかけてきた、うさぎちゃん、こじかちゃん、ことりちゃんとおともだちになって、歌をうたったり、水遊びしたり、ブランコしたり、かくれんぼしたり、絵をかいたり、たくさんたくさん遊んだビビちゃん。
おひさまが沈んで、おうちへ帰る時間。みんなで夕日をながめる見開きページには、終わりを感じさせ寂しい気持ちになりますが、楽しい時間を過ごせた満足な気持ちが伝わります。友人と仲良くながめる夕日ってすてきです。
ころがってきた道を、友人たちと帰るビビちゃん。帰り道も寂しくない。見送ってくれるみんな、優しいなあ。
ともだちと涙で別れたビビちゃんですが、コンピュータで遊んでいても、おもいだすのは、友だちとあそんだことばかり。最後は、みずからプラグをぬいてともだちに会いにでかけるのがいいですね。ビビちゃんはロボットの姿で描かれていますが、わたしたちと同じ。一人で寂しいという気持ちを感じるビビちゃんにさらに愛着がわいてきます。

わたしたちの生活でもかかせないパソコン。うまく使えば、便利で楽しくて知識も増える。でも、実際に体験したことは、やはり強く記憶され心に残るのでしょう。実際に外へでれば、知っている以上に世界が広がる。
コロナ感染症がおさまって心置きなく外へでることのできるように早くなってほしいものですね。それまでは少々我慢。本やパソコンで情報を得ることをしていたいとおもうのです。きっと実体験できる日がかならずくると信じ楽しみに待っています。

スティーブ・アントニーさんは、ちょっとかわった味わいのえほんをかかれています。
「女王さまのぼうし」飛ばされてしまった帽子を追いかけて女王さまがロンドンの街をかけまわる観光えほん。「やだやだベティ」こどもゴリラのベティがパワフルに泣いちゃう楽しいえほん。「ゆうかんな3びきとこわいこわいかいぶつ」かいぶつなんかこわくない!でもだんだん近づいてきていますよ・・ほらすぐうしろに。「おねがいパンダさん」ドーナツをたくさん持っているのにみんなになかなかあげないパンダさん。どうしてなの?

ちなみに、投稿タイトルは最後に考えるのですが、いつも苦労します。内容以上の過剰なタイトルがまずでてきてしまうのです。タイトルでねたばれしないように、でも目をひくような、笑いもちょっとくるような、素敵なタイトルをうまく思いつくと、びしりと決まって気持ちいいのですが、なかなかうまくいきません。「とじこもりロボ ビビちゃん」と最初に思いついたのですがちょっとこれはやめておいて正解ですよね。今回つけたタイトルもどうかとおもうのですが・・これ以上おもいつきませんでした、すいません。