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第188回 もぐらのすごさ

「もぐらはすごい」 アリス館 2018年5月発行 36ページ 25×23cm
アヤ井アキコ/作 川田伸一郎/監修

もぐらの生態にせまる絵本です。もぐら・・・皆さん、見たことありますか?
森、林、畑、たんぼ、公園、学校の中庭など、かなり身近に住んでいます。
土の中で生きてますのでもぐらに会うのは難しいようですが、わたし、もぐら塚さえ見た覚えがないのです。(それとももぐらの穴とわかっていないか?)どうやら見逃しているらしい、とっても残念。
日本には、合計8種類のもぐらが生息しています。北海道にはいないそうですよ。へー。

もぐらといえば、穴掘り。
もぐらの「手」を大きなイラストでどーんと見せてくれます。
5本の指に鋭いツメ、大きな手のひら。ほんとの大きさの絵も横に添えられてます。
この手を使ってどうやってトンネルを掘っていくのか、上から見た図が描かれて、とてもわかりよいのです。
「顔の前に 手をさしこみ 大きな手で 土をかきだす。」
「手のひらは、外側を 向いている。」
「うしろあしは ちいさい。」
「掘った 土の あまりは 地面の 上に 押し上げる。」
「うでの 力は とても 強い。(ちょっとした石なら持ち上げることができる!)」

すごいです、もぐら。
質問)でも、穴の中はまっくらで、何も見えないと思いますが、トンネルの中で迷ったり、オデコぶつけたりしないんでしょうか?
答え)もぐらの鼻先にあるつぶつぶで、地面や空気のゆれを感じるのです。「アイマー器官」と言います。
ほかにも、トンネルを進むのに適した特長がたくさんあります。
毛は柔らかくまっすぐ生えているので土の壁にひっかかりませんし、耳たぶがないので壁に当たらず、後ろへさがっても邪魔にならない短いしっぽ、トンネルサイズにぴったりおさまる体、目は薄い皮膚におおわれているので土が入りません。 へー。
ほかにも、このようなもぐらのナゾについてかかれています。
・もぐらの食事はなあに?どのくらい食べるの?
・トンネルはどこまで広がってるの?
・一日のスケジュール。
・もぐらのうんちから生えるキノコがあるんですって。
・オスでもメスでもなわばりを争います。
・そんなもぐらの恋愛はどのような?
・子どもたちが巣立ちをします。
・上手に泳げます!
・日本に生息する8種のもぐらの大きさと分布図。
・ふしぎな装置 アイマー器官のこと。

なるほど・ふーむ、ともぐらのことがわかります。タイトルに偽りなし。
作者のアヤ井アキコさんのかわいい挿絵で、さらにもぐらという生き物に親しみをもちます。ほんものを観察してみたくなりますね。
巻末にもぐらの生態について少し詳しい解説と、監修のもぐら博士・川田伸一郎氏のあとがきがあります。
アヤ井アキコさんの他の著書もご参考まで。「こうもり」↓もすごいみたいですよ~。

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第185回 須弥山で運動会

今回は以前にもとりあげた、苅田澄子さんの絵本。中川学さんの挿絵です。
ご紹介する作家・挿絵画家は、なるたけ重複しないようにしているのですが、仏教を下敷きにしたこの絵本、なかなか興味深いので、チョイスいたしました。
仏教やほとけさまのことなんて全然知らないよ、と思う方が大多数と思います。だがしかし!
前見返し・後見返しに、ざっくりほとけさまの紹介がのっています。お話を読みながら、あ、このかたは、あみだにょらいさま・みろくぼさつさま・おふどうさま・せんじゅかんのんさま・・・というふうに探しながら読むのも。読み終わったのち、カバーの裏にもう少し詳しい解説・・「古代インドの宇宙観的仏さま運動場世界」「こまいぬ・おししの違い」「ほとけさまの種類」「ほとけさまのごく簡単なプロフィール」などで再確認すると楽しいでしょう。う~ん、いたれりつくせりですぞ。
*ちなみに以前ご紹介したのは、地獄のえんまさまが激辛ラーメン屋をするお話でした。『(第33回の投稿「じごくのらーめんや」)
苅田さんはちょっと変わった世界を描くかたなようですが、こんなユーモア、わたしは好きです。

「だいぶつさまのうんどうかい」 アリス館 2017年8月発行 32ページ27cm
苅田澄子/文 中川学(なかがわがく)/絵

今日は、仏様たちの世界で運動会が開催されます。その模様をレポートいたしましたのが、この絵本。
駐車場では、雲、獅子、白象に乗って到着する仏様たちでいっぱい。
全員、赤白の体操帽をかぶっているのが、まずは笑いを誘う。おのおの準備体操や設営をしています。

さてこちらでは、ジャージを着てライン引きをする「みろくぼさつさま」と「あみだにょらいさま」の立ち話。
「あみだにょらいさま ひかりかがやいてまぶしいですわ」「みろくぼさつさま いつもスマートでうらやましいこと」
仏様たちの麗しいお言葉なのですが、ちょっと立派過ぎてなぁんか空々しく感じちゃう挨拶をかわしあってる、というのが面白いです。
あちらにおわすは「だいいとくさま」顔6つ・手6本・足6本ある明王さま。すべての手・足を動かして、ランニング中。
おっ、玉入れ競技の玉を準備するのは、おそらく「かんのんさま」。いつも憤怒の表情なはずの「あいぜんみょうおうさま」も穏やかなお顔で運動会を楽しんでいる様子。
おおきなおおきな体の「だいぶつさま」もやってきてご挨拶。「はじめての参加です。よろしゅうたのみます」 えっ!初参加なの?!そんな意外な設定に、ぷふっ と笑ってしまいます。
ほとけの国の門番・ふたごの「におうさま」が、ラジオ体操の見本をみせています。おやおや、だいぶつさまは、1000年すわりっぱなしなので足がしびれてすでに苦しそう。無理するなよ、なんて仁王様に言われちゃってます。

赤・白の組にわかれて、さあ、競技はじめ~!
最初は、玉入れ。「せんじゅかんのんさま」は手が一杯あるのでたくさん玉を投げられる、というオチ、ベタでいい。
次は、まんじゅうくい競争。わんわん ぱくり!と「こまいぬ」たちが活躍。あらっかわいい!
さてさてこんどは「しちふくじん」の演奏で、ほとけダンスの時間です。「だいぶつさま」お身体が大きいので、踊ると運動場が揺れに揺れ、みんなよろよろ・すってんころりん。わわわ、須弥山の縁から落っこちてるほとけさまもいらはいますよ。

「だいぶつさま」どの競技でも失敗つづきでお疲れのご様子。「もうお寺に帰りたい・・」とぼやいています。
最後は組体操だぜ!ですがここで問題発生。しんどいので、だあれも土台になりたくなくって、ほとけさまたちがもめています。
「わたしにのりなされ」どっかり座った大仏様。
みんなで、大仏ピラミッド。マンダラの完成!このページかっこいいですよ!このポスターあったら買っちゃいます。
最後は、ごくらくぶろで、汗を流します。大仏様が湯船につかったのでお湯があふれてる~。でもみんな、大満足。楽しい運動会でした。

ジャージを着てライン引きする「みろくぼさつさま」とか、準備体操する「せんじゅかんのんさま」とか、「湯船に入るかんのんさま、前を隠しておしり丸見え」とか・・仏様たちを茶化しておりますので、見る人によっては物議を醸しそうなところ。
正直言いますと、お正月は神社に初詣・クリスマスを祝って・法事はお寺、という暮らしでさほど違和感ございませんので、私は好きですよね。ユーモアの範疇ということでいんじゃないでしょうか・どうでしょうか。楽しく仏様たちの世界を知ることができますし、子どもたちの祭典・運動会というテーマを絡めることでとっても身近に感じることが出来るじゃないかしら。
そして、この絵本の楽しい世界観によって小さい人たちが「仏教学」に興味を持ってくれるかも・・だといいですよね・・。

かなり不可思議な世界観のお話ですが、挿絵がとにかく秀逸。この不真面目な(あっ言っちゃった)雰囲気にばっちり似合ってカラフル。グラウンドの黄色の上を、濃いめの赤・青・黄緑のほとけさまたちが配置され、とってもポップ。そこへ濃い緑で縁取りされた黒い大仏様が乱入し、全体が引き締まる。そんな感じです。この色使い、とても好きですねえ、ぐっときます。
どんな方が挿絵を担当されたのかといいますと、中川学(なかがわがく)さん、浄土宗の僧侶にしてイラストレーターなのだそうです。(なるほど、そういうことなのだ。)
続編の「だいぶつさま おまつりですよ」もありますよ~。

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第111回 はたらく車、働くひとびと

鎌田歩氏の描くカッコイイ働く車・働く人たちが登場するおしごと・のりもの絵本4冊をピックアップしてみました。

「なんでもあらう」 福音館書店 2014年5月発行 32ページ
鎌田歩/作

けんちゃんの自転車、よごれている。きたないままだとあぶないよ、と教えてくれたおじさんがいました。
きたないとどうして危ないのかな?
汚れた車輪やチェーンだと、ブレーキがきかなくなったりチェーンがきれたりするかもしれないよ。きれいすることで安心して自転車に乗ることができるんだよ。
最初に登場する働く車たちは、水をまく散水車、ごみを吸い込むスイーパー、ごみを運ぶダンプトラック。3台一組で道路を洗います。道路がきれいだと安心して道路を走ることができます。
お次は、電車を洗うおしごとです。電車を洗うための線路には、ガソスタにある洗車の機械のようなものがあります。そして機械のブラシでは届かない正面や連結部分や窓枠をスポンジやブラシを使って丁寧に人があらうのです。
高いビルの窓ガラスや道路の標識も洗います。きれいにしないと傷んでしまうんだ。
きわめつけは、飛行機!飛行機は真夜中に洗うんです。やはり飛行機も洗うんですね。洗うにはおうちで使うひと月分ほどの水が必要ですが、故障を見つけやすくするため、整備のために、汚れをしっかり落とすことが必要です。
最後の仕上げに、働いたみんなでお風呂にはいります。ゆったり湯船につかってゆっくり休んでくださいね。

「そらのうえのそうでんせん」 アリス館 2018年12月発行 32ページ
鎌田歩/作

こちらもおしごと絵本です。事故がおきないよう怪我しないよう安全に仕事をするため、準備、確認、慎重を期して行動します。
送電線は、発電所で作った電気を、遠くに届ける仕事をしています。その送電線を支えるのが送電鉄塔といいます。
その送電線を点検整備をするひとたち、「ラインマン」。
装備品とその解説ページの「ラインマン図解」がかっこいいです。
どうやって鉄塔に登るか、古い部品を交換していくか、じっくりみせてくれます。
鉄塔のてっぺんは、地面から50メートル。20階建てのビルくらいの高さだそうです。足がすくみますね。
送電線に宙乗り器(ちゅうのりき)をかけて、鉄塔から鉄塔を移動して古い部品を交換していきます。(途中でトイレに行きたくなったらどうするんだろうという疑問がわきました。ごめんなさい。)

「まよなかのせんろ」 アリス館 2016年11月発行 32ページ
鎌田歩/作

こちらもおしごと+のりもの絵本、今度は電車のはしる線路をなおす車両「マルチプルタイタンパー」が主人公。
夜、お客さんがおりた最終電車が車庫へ帰っていきます。
そのとなりの留置線に、大きな車両がとまっています。線路のゆがみをはかり、レールをはさんで持ち上げて、線路にしかれた石ころ=さいせきを整えて固め、再度線路のゆがみをチェック というたくさんの機能のある便利な車両「マルチプルタイタンパー」があります。マルチタイタンパーが通ったあと、作業員さんたちが線路に残ったさいせきを掃除し、もう一度人間の目でゆがみなどを確認し、整備作業が完了します。
毎晩、電車の走らない真夜中に、作業してくれています。だから安心して電車に乗ることができるんですね。力強く働く大きな乗り物はやはりかっこいい。

「はこぶ」 教育画劇 2014年1月発行 32ページ
鎌田歩/作

これは、しごと絵本ではないですね~、なに絵本っていうんでしょうか。進化絵本?のりものはたくさん登場します。
遠い遠い昔の時代のひと(旧石器時代あたりでしょうか)がリンゴをはこんでいます。手にいっぱいもてるだけをはこぶ。
いれものに入れたら運びやすくなるね。
ひもでしばって棒につるしたらいれもの2個はこべるぞ!
ふたりがかりなら、もっとたくさんはこべるね。
背中にかつぐ道具を作ったらもっとたくさんはこべるよ。
牛の背中に乗っけてはこんでもらおう。
牛にひいてもらう荷車ができました。
雅な人々をはこぶ素敵な牛車も。

どんどん、進化していきます。
自転車やバイクに乗せて運ぼう。
おそばやラーメンをこぼさず運ぶ工夫もできました。
車が登場。三輪自動車、トラック、バス。
火事に出動する消防車、具合の悪い人を運ぶ救急車、安全に燃料を運ぶタンカー、車を運ぶ車、コンテナを運ぶ列車・・・など用途もいろいろ。かたちもいろいろ。

いろんなものを、たくさん、遠くへ、急いで、運びます。
どんどんどんどん、進化します。
あれれ、途中で山崩れが発生。荷物が運べない状況に。ここで絵本の流れがいったん止まるのが面白いですね。
山崩れをなおし、ジャリを運び、道路をなおす作業員さんや働く車たちが登場。
どんどんなおし、どんどん道路を作り、トンネルを掘って、橋をつくり、遠くへ続く道ができていきます。
技術が進化していきます。遠くへ行ける飛行機や大容量を運べる貨物船が登場。海の上も空の上も。
遠くへ、遠くへ。急いで、急いで。運べ運べ。
宇宙へだって届けるさ!と、最後は空へ向かってロケットが飛び出します。このシーンは、迫力ありますね。宇宙飛行士にリンゴを届けます。おいしそうにリンゴを食べる宇宙飛行士がいいです。

後半、知識・文化・技術が発展し、たくさんの車が登場します。ページの左から右へせわしなくどんどん運ぶためにみっしり描かれた乗り物に少し不穏な空気を感じてしまいます。作者の鎌田さんは乗り物がとってもお好きなのはたくさん描かれた乗り物から感じますが、反面、犠牲にしてきたものがあることを訴えていると感じます。遠い場所で作られているものを買うことができたり遠くへたくさんの人々を運べたり、短時間で遠くへ行けたりと、確かにいろいろ便利ですけれど。否定はできませんけれど。機械や技術は発展したけれど何か置き去りにしたものがありそう。・・そんなこと言ってないで絵本を楽しめばいいのかもしれませんけど。
「子供の頃、乗り物がたくさん書かれていたあの楽しい絵本、大人になって読み返してみたら、こんな仕掛けがあったんだとわかる絵本」なのかなあとおもいました。未知の宇宙空間に滞在する宇宙飛行士のために届けられたリンゴに喜ぶ笑顔、これこそが「運ぶこと」の目的であってほしいとおもいます。

鎌田歩氏の絵本は、擬音語が描かれ漫画風で見やすいです。たくさんののりものがしっかり描かれて、登場人物たちもかわいらしい。特に「なんでもあらう」のぶしょうひげのおじさんの絵がわたしは好きです。ほかにも楽しい乗り物絵本をたくさんかいておられます。



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第41回 お弁当の食べる順番が気になる楽しい絵本

「わたしのおべんとう」「ぼくのおべんとう」
アリス館 2003年5月発行 28ページ
スギヤマカナヨ/著

今日は、2冊のご紹介。「ぼく」と「わたし」がおべんとうを食べているところをながめています。
お弁当を開きます。パカーーーーン。今日の「ぼくのお弁当」は、たまごやき、からあげ、グラタン、ミニトマト。たまごやきは野菜入りのしょっぱいやつ、グラタンは昨日の夜も食べたとか、唐揚げ3個も入っててうれしい、などなど食べながら感想がはいります。食べるとどんどんお弁当箱に隙間ができていくのが楽しいんですね。食べていく達成感があります。そして、ご飯の下にはなんと、タコさんウィンナーが隠されていました!さすがお母さん、子どもの喜ぶツボを知ってますねえ。いやあ、大人でも嬉しい。お弁当の作り手の努力も感じます。おかあさんありがとう。

お弁当を開きます。ジャーーーーン。今日の「わたしのお弁当」は、サンドイッチです。ミートボール、ブロッコリー、デザートにいちごがあるのがうれしい。
パンがお弁当なのはなんだか嬉しいですよね。4種類のサンドイッチは、ツナタマゴ、ハムチーズ、トマトとキュウリ、そして驚いたのは、納豆と海苔のサンド。
パンに納豆をはさむとは、初めて見たのですがポピュラーなのかしら。 『うわー!おのりとなっとう。おかあさんもやるなあ。』というセリフがあり、意外ではあるが拒否感はない模様。へー。トマトが苦手だという主人公は、トマト・キュウリサンドにミートボールをはさんで食べちゃいます。苦手なものも頑張って食べていていいですね。そしてミートボールは、昨日お母さんと一緒に作ったものなのですって、昨日の晩ごはんは、ハンバーグだったのかもな、なんていう想像も出来て楽しい。

ただ、食べる順番が気になってしょうがないのです。私は先に苦手なものを、好きなものは最後にいただきたいほうなものですから。納豆サンドは一番最初だとか、ブロッコリーは少しずつ食べたいとか、ご飯とおかずは交互に食べるのがやはりいいもんだ、などといろんなことを言いながら読む楽しさもあります。隣り同士で食べる「わたし」と「ぼく」が、ミートボールとからあげを交換したりします。みんなで食べるご飯の楽しさも伝わってきます。いろいろ食べる順番を言いながらみんなで読むのも楽しそうですね。
とても楽しい絵本でした。