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第178回 空想でたゆたってみる

「サディがいるよ」 福音館書店 2020年9月発行 32ページ 26×19cm
サラ・オレアリー/文 ジュリー・モースタッド/絵 横山和江/訳
原著「THIS IS SADIE」 Sara O’Leary, Julie Morstad 2015年

ページをめくって最初の絵は、ダンボール箱に入って、頭をちょこっとのぞかせた女の子が、サディです。この絵で私はすでにわくわくしてしまいました。ちょっと薄暗くってせまい場所って落ち着きます。心が自由に漂いだしぼんやり空想する楽しさ、誰しもわかるとおもいます。
想像力が豊かなサディ、今日はいったいどんなことをするんでしょうか。
「これは、ダンボールばこじゃないんだって。『おおきいふねにのってるの。ひろいひろいうみをたびしてるんだ』」
海の世界にすむ女の子になったり、(美しい海藻が伸びくらげが泳ぐ水の中の世界)
狼に育てられた男の子になったり、(木が生い茂る暗い森、狼のお母さんと子どもたちと一緒に遠吠え!)
不思議の国を冒険したり、(サディはウサギとヤマネと青いドレスの女の子とお茶会です。サディはぼうしをかぶってる!)
おとぎばなしの世界で勇者に!(満月が照らす草原を馬に乗って駆けていく。)
あんまりたくさん想像が働くもんだから、サディは一日が全然たりないのです。世界は広く空想は限りない。

わたしもわりとぼーっとした子供でした。そのせいか駅で母とはぐれ迷子になり、もう二度と会えない!どうしよう!駅で暮らすしかないか?・・という想像をし恐怖した経験がございます。
空想でぼんやりしていると、ぼーっとしてんじゃないよ~なんて言われそうですが、自由に心をたゆたわせ、たくさんの人物になることは、悪いことじゃあありません。いろんな立場の人の気持ちをおもんぱかることもできるでしょう(こじつけですけれど)。
一日一日いつも時間に追われているような気持ちなので、ゆったり時間を過ごすサディがなんだか羨ましいなあ・・とおもってしまいます。こんな風に心にゆとり、持ちたいものですね。(疲れた大人の感想ですいません。)

とてもかわいい挿絵です。暗めの深い色の中、カラフルな色がポイントに使われ目を引きます。サディのお部屋に注目してみますと、シックな色合いのベッドカバーですが、ベッドマットはピンクで、赤い積み木や引っ張り出された女の子らしいかわいいお洋服が素敵です。しかし小物は、本がたくさん、ボトルシップ・カナヅチ・釘などわりあい硬そうなものもおいてありますね。かわいすぎないお部屋がいいです。特にベニテングタケ型ランプの形が愛らしくわたしも欲しい。ヒト型の赤ちゃん人形ではなくてキツネのぬいぐるみなのもわたし好み。
カバーの後見返しに著者紹介があります。2人の作者の写真は子供の頃のもの。想像力豊かな著者のお二人も主人公サディと同じ年頃の写真を掲載されたのでしょう、素敵ですね。
カバーの裏に、サディの勇者姿の大きなイラストがありますよ、カッコイイです!
挿絵のモースタッドさんの他の作品に「スワン:アンナ・パブロワのゆめ」「きょうがはじまる」「ショッキングピンク・ショック! 伝説のファッションデザイナー エルザ・スキャパレリの物語」「はじまりは、まっしろな紙 日系アメリカ人絵本作家ギョウ・フジカワがえがいた願い」「ひびけわたしのうたごえ」