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第130回 春夏秋冬を旅する

「12月くんの友だちめぐり(新装版)」 西村書店 2010年3月新装版発行 32ページ
ミーシャ・ダミヤン/文 ドゥシャン・カーライ/絵 矢川澄子/訳

原著「DEZEMBER UND SEINE FREUNDE」 Mischa Damjan Dusan Kallay 2010年(旧版発行年1986年)

一年のうち、12月をおさめる12月くんは、12月以外の季節をしりません。知りたいともおもっていなかったのですが、ある嵐の夜、物知りの大風が、春の野に咲く花々や花盛りの木々、素敵な果物の実りのことを教えてくれました。12月の大地には花はすでに枯れてないのです。凧作りの仕事にも身が入らず、なんだか寂しい12月くん、ほかの月のことを知る旅に出ることにしました。
12月くんのファッションがインパクト大です。なんと頭に小さな白い鳥小屋(取り外し可能)をのっけてるんです。コレすごいセンスですよねー。おまけにニンジンみたいな真っ赤の付け鼻。のどもとが赤い小鳥がおともです。(なんていう鳥なんでしょうか?)

3月へやってきた12月くん。3月をおさめる3月くんが野原を案内してくれました。
3月は、冬が終わり春を迎える月。ツグミが巣をかけさえずる歌にききほれます。草が芽吹きはじめています。ツバメ、ツル、コウノトリが海を超えてまもなくやってくる。春を告げるユキワリソウの鐘の音がきこえ、待ちに待った春がやってきました。春のお祭りを3月くんと楽しみ、大の仲良しになりましたが、月はさいごの日になって、お別れのときがやってきました。さあ、次は6月へ・・・

3月、6月、10月を旅して春夏秋冬を知った12月くんは、ちょっと大人になりました。それぞれの月にしっかり働くことで、実りを得ることを知ったのです。さあ、12月にはクリスマスという大イベントがありますよ。クリスマスプレゼントの支度にかかります。おいしそうなケーキやパンやビスケットをたくさんつくります。自分の月が始まって張り切って働く12月くんがかわいらしい。

カーライ氏の挿絵が美しいです。しかしよ~く見ると、一部未完成の部分があるんですよね。戸棚や壁の位置の構図がおかしな感じだったり、空や壁のフチなどあり得ないところありえないもの(カラフルな立方体、笛(?)、壺、マグカップ、弦楽器、漏斗などなど・・)が描き込まれていたりします。でもこの不思議さがとても魅力に感じました。不思議でファンタジックなんですがしっくりくる。リスベート・ツヴェルガーの挿絵をちょっと思い出しました。鳥や動物たちが密に描かれたページが圧倒的でとても魅力的です。よろしければお手にとってじっくり画面を眺めてみてください。
(10月くんのファッションも不思議でかわいいですよ。)

挿絵画家のドゥシャン・カーライは、1948年、スロヴァキアのブラチスラヴァ生まれ。ブラチスラヴァ国際絵本原画展で金のリンゴ賞を2度、「不思議の国のアリス」でグランプリを授賞。国際アンデルセン賞の画家賞も授賞。アンデルセンの童話に挿絵をつけています。