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第86回 魅力のツリーハウス

「おおきな きが ほしい」 偕成社 1971年1月発行 32ページ
佐藤さとる/文 村上勉/絵

「おおきな おおきな 木があるといいな。ねえ、おかあさん。」
かおるくんが、夢見ています。 大きな大きな木があって、そこへハシゴをかけてのぼるんだ。
ハシゴをのぼっていくと、小屋があって、そこでお料理もできるようになっていて、ホットケーキがやけるようになっています。焦げて煙がでてもだいじょうぶなように、エントツもついている。部屋をもうひとつ作って、ベッドをおきます。
3才の妹かよちゃんもあがってこれるように、つりかごをつけるんです。ハンドルをまわすと、つりかごがあがってくる仕組み。結構考えてますね。妹ものぼらせてあげるのは優しいおにいちゃんです。
さらにまだまだハシゴがあって、どんどん登ると、見晴台があります。ちゃんと手すりもあってあんぜんです。遠くまで見渡せます。児童車がかぶとむしみたいに小さく見えるほど。ヤマガラやカケス、リスの家があって、こんにちは、とあいさつします。

ああ、もうただただわくわくします。私も大きな木が欲しい。想像の翼を広げる楽しさ。おかあさん・おとうさんが、かおるのおはなしをしっかり聞いてくれるのも嬉しいですよね。ツリーハウスの春夏秋冬もきちんと想像されていて、部屋の壁には絵や季節のお花が飾られています。お話ももちろん、挿し絵も楽しい絵本です。
正直申し上げますと、わたしは高いところに行くと足がすくんでしまうのですが、それでもやはりツリーハウスって魅力があります。ふしぎな島のフローネ(というアニメがありました)、ハックルベリー・フィンのツリーハウスの影響でしょう。自分だけの場所ってのがいいのでしょうねえ。



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第51回 ひなたぼっこのすばらしさ

「じゃんけんねこ あかね幼年どうわ」
あかね書房 1977年6月発行
佐藤さとる/作 岩村和朗/さしえ

枯れすすきのヤブで、二本足で立って、たっちゃんを通せんぼする、とらねこがいた。
「このやぶに 入ってきたものは おれとじゃんけんしろ」
命令調で怪しいのに、たっちゃんは勝負にのっちゃうんです。
負けたら、すぐにでていくこと、
勝ったら、お楽しみ。
悪そうな笑みをうかべたとらねこのさしえがまたいいのです。

猫のちょきは、爪が二本、パーは爪が五本、まったくでていなければグーなんです。
じゃんけんがすんだあとの、猫のニヤリ、にドキドキします。
勝利したたっちゃんへのご褒美は、なんと、猫になってひなたぼっこ。

ひなたぼっこのできる原っぱがなくなってしまう、という寂しいラストなのですが、
岩村和朗さんの挿絵の光る楽しい絵本でした。
猫好きさんには、特におススメいたします。

ちなみに、勝ったバージョンのお話と、負けたバージョンのおはなしがあります。負けたバージョンは、「佐藤さとる幼年童話自選集 第2巻」に収録。