に投稿

第88回 楽しい冬の光景

当店は札幌にございます。本州のほうとは少し季節が遅れ気味。ただいまお花が元気よく咲き、フキノトウがぐんぐん伸びております。花のない茶色っぽい世界だったのが、緑が萌えピンクや白の花で明るく彩られています。気持ちが上向きますね。
冬は終わりだなあと実感いたします。終わってしまうと途端にちょっとだけ懐かしいような惜しいような気になったりもします。まだ踏まれていない真っ白に積もった道路や、夜に街頭に照らされて白く光る絶え間なく降る雪。
厳しい寒さは忘れ、美しい冬景色のみをおもいだす。そういう時に読みたくなる絵本です。
文字がわりとみっしり多いめですので、一人読みでしたら小学中学年くらいからがよいようです。

「ふゆのはなし(世界傑作絵本シリーズ・スイスの絵本)」 福音館書店 1971年3月発行 36ページ
エルンスト・クライドルフ/文・絵 大塚勇三/訳

寒い寒い冬の物語です。『窓に息をふきかけると、息は凍りついて、おとぎの森みたいなもようになります。』
三人の小人が主人公です。なんとあの有名な「7人の小人」のいとこだなのだそう。そう、白雪姫を助けたあの7人の小人です。
7年ごとに白雪姫が訪ねてくるのだが、今年はそれにあたるのだとか。
白雪姫に会いに行こうぜ!と3人の小人、元気よく出発。途中で、白い雪のかぶったナナカマドの赤い実をついばむウソドリに出会ったり、化け物みたいな形に積もった雪にびびったり、凍った池で遊ぶ美しい氷の精がスケートを楽しむのをながめたりそれを邪魔したり、かわいいリスのそりで(小人は小さいのでリスでも引っ張れます。)7人小人のおうちの近くまで送ってもらったりと、楽しい冬の遊びを満喫しながら歩いていきます。
途中で凍りついたほら穴に住む”氷の小人”に出会います。肌の色がばら色や緑になったりするんですが、喜びもしくは怒りのせいでそうなるのか、しゃべらず口の中でもごもご言うだけ。なんとも不思議なこびとです。ほら穴には大きなツララがあって3人小人はいたずらして折ってしまいます。この氷の小人がなんだか不思議で、ささいなエピソードとおもうのですが、むしょうに印象に残ります。ヨーロッパでは何かを意味してるんでしょうか。

そして、7人の小人の家にとうとう到着。歓待してくれます。白雪姫も到着しています。白いドレスに黒髪が映えてとっても美しい白雪姫。
7年ぶりの再会に楽しい宴が開かれます。(その際の配膳係りがなぜか氷の小人!)
今は、結婚し妃となっているけれど、ここへ来れば私はあのころとおなじ白雪姫なのだといいます。
ははあ、息抜きにいらっしたんですね。お城で幸せなのでしょうけれど、ちょっと息が詰まるのでしょうか。小人たちと白雪姫は、
つららで奏でる可愛らしい音楽にあわせてスケートし、長い坂をそりで滑り降りたりと冬スポーツを楽しみます。でもそろそろお別れです。
最後のシーンは、幻想的。白雪姫は、吹雪の渦に包みこまれ高くのぼっていき、夕焼けで赤く染まった空を雲に乗ってとんでいくのです。
冬の厳しい寒さの光景が物悲しくけれど美しく描かれています。何事にもおわりがやってくる。冬だっていつか終わって春がやってくる、そしてまた冬が。季節はめぐっていくのだから、毎日を楽しくすごしなさい、ということでしょうか。 と、若干強引ですがきれいめにまとめてみました。

最後のお別れのページ、3人の小人がスキーで家に帰っていくシーンも描かれてますが、手に何か四角の白いものを持ってる・・なんでしょうこれ?ヨーロッパの風習なのでしょうか?



に投稿

第61回 夜にみまわるこびと

「みまわりこびと」 講談社 2014年10月27発行(原著は1960年) 25ページ
アストリッド・リンドグレーン/文 キティ・クローザー/絵 ふしみみさを/訳

大事にすると、農場をまもってくれる小人のおはなしです。スウェーデンではトムテ、ノルウェー・デンマークではニッセ、とよばれています。敬意を払って接しないと農場を出ていってしまうんだそうです。日本の妖怪のざしきわらしに似ているようですね。

冬の真夜中、森の農場では、人も動物もぐっすり眠っています。雪は深く積り白く輝いています。肌を刺すような寒さなので、夜も暖炉で火を燃やし家の中を暖めます。
真夜中、一人起きているのは・・・こびとです。いつからいるのか誰も知らないほど、昔からこの農場にいるのです。その年とったこびとは納屋に住んでいます。夜にこびとは、農場をみまわり、牛・馬・鶏や羊たちに声をかけます。耳には聞こえないその小さな言葉が動物たちにはわかります。冬はきて、また去っていくもの。夏はきて、また去っていくもの。時は巡って、温かで緑多く楽しい季節がまたやってくると、動物たちを励ましています。
そして犬のカーロの鼻に優しくふれてご挨拶(表紙をごらんください)。カーロへの挨拶が特になんだかぐっときます。カーロも毎晩、友達のこびとがくるのが楽しみなのです。犬のみ名前が明かされてますので身近に感じるのでしょうか。

夜に見回って農場を気にかけてくれるけれど、人間には、こびとの姿が見えないし声も届きません。それでもみんな、こびとがいるのを知っているのは、朝になると、雪の上にてんてんと、小さな足跡が残っているからなのです。こびとは寂しくおもっています。そうして、納屋に戻ります。納屋で待っていた猫にミルクをあげ、本を読み、夏を夢見てベッドで眠るのです。
こびとの声をきくことができないというのはかなり寂しいですね。人間は取り残されているという感じがちょっとしますが、寂しくもあっためてくれる絵本です。ぜひ小人に会ってみたいですね。