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第165回 妖精がサバイバル

羽を失った幼い妖精のフローリーの物語です。飛べないので仲間のもとに戻れない上に、危険な巨人の住む庭に落ちてしまいました。頑張るフローリーの冒険譚です。

「夜の妖精フローリー(ティーンズ文学館)」 学研プラス 2020年11月発行 141ページ
ローラ・エイミー・シュリッツ/作 日当陽子/訳 さとうゆうすけ/絵
原著「THE NIGHT FAIRY」 Laura Amy Schlitz 2010年

妖精は生まれてすぐに歩くことも話すこともできるので、妖精の親は子育てをしないのだそうです。生後3日で、妖精の子どもは自分で自分のめんどうをみなければいけません。生まれて3ヶ月ほどのフローリーの身長は、ドングリほどの大きさ。ヘビ、フクロウ、カマキリ、リス(リスって木の実だけでなく鳥のヒナや卵などを食べる雑食なんですって。)などなど小さな獲物を狙う生き物から身を守らねばなりません。大きくなる前に死んでしまう妖精の子どももいます。
ファンタジーなのに、なかなかシビアな設定がわたしは気に入りました。それに妖精の使う魔法は、成長するに従って必要なときに使えるようになるというのもなかなか考えられていると思いました。
礼儀作法を教わっていない小生意気なフローリーが、生きる上で関わっていく相手から学んでいくことも、興味深い。いつも腹減らしなリスのスカッグルや頑固なクモとの丁々発止のやりとりが面白いです。なかなかたくましい妖精の子です。

さとうゆうすけ氏の挿絵が非常にきれいです。フローリーの生意気そうな顔も愛らしい。一人になって初めての夜を過ごした鳥の巣箱からのぞいた花の咲く庭の景色が美しいです。フローリーが心奪われる気持ちがわかります。コウモリ、アライグマ、ハチドリなど生き物たちもまたかわいい。わたしはカマキリが嫌いなんですが美しいんですよね。カラーでみたかったです。