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第89回 素敵なライオンのぬいぐるみ

「ライオンららら (小学館の創作童話シリーズ18)」 小学館 1975年8月発行 44ページ
立原えりか/作 やなせたかし/画

まりちゃんは、ライオンを一頭、おたんじょうびにもらいました。金色のたてがみに王様のしるしのかんむりをかぶって、きらきらひかる目をした素敵なぬいぐるみ。名前は、ららら。ポケットに入るサイズの小さなライオンです。しかもお話できます。かわいいですねえ。
らららには、秘密がありました。なろうとおもえば、ほんもののライオンになれるのです。アフリカの野原で王様としてみんなのためにはたらかなければいけませんでした。「王様なんて つまんないよ。いつもひとりぽっちで、えらそうにしていなければならない。さびしくても なくわけにいかないし、だれかをすきになることもできないんだ。だって、みんなをおなじように愛さなければならないからね。」
二人でシーソーにのって遊んだり、ポケットにいるほんのりあったかいらららをそっとなでたり、デパートのカフェで頼んだプリンにのったほしぶどうをらららにあげたり(らららはほしぶどうが大好き)。
故郷のアフリカを思い出して寂しくなったりもしますが、まりちゃんだけを大好きでいることができる幸せをかみしめています。
けれどらららは(徹底的に悪い顔した)どろぼうにぬすまれてしまうんです。おいしいお肉のかたまりをあげよう、広い野原で走らせてやろう、どろぼうは甘い言葉で仲間になるようにせまります。ちょっと迷ってしまったけれど、やはり大好きなまりちゃんのもとへと、走ります。
なくしてしまった小さなライオンは、もしやアフリカにかえってしまったのかな、と泣いているまりちゃん。街を駆け抜けて大急ぎで帰ってきたらららは、まりちゃんをそっとだきしめ涙をしっぽのふさでぬぐいます。このシーンがわたし、大好き。ライオンにだきしめられたいですねえ~、あったかでほんのり猫くさいんじゃないでしょうか(猫ってほんのり猫くさいのです)

互いをおもいあう、そんな強くて優しいぬいぐるみがわたしのそばにもいてほしかった。まりちゃんがうらやましいです。
本物のライオンになれるぬいぐるみ、ライオンなのにほしぶどうが好き、という不思議な設定が楽しい。
そして、挿絵が「アンパンマン」の原作者やなせたかし氏。やわらかい色合い、グラデーションがきれいです。



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第13回 猫の雨の日は23時間の睡眠をとる権利

「まんげつの夜、どかんねこのあしがいっぽん」 小学館 32ページ 2016年発行
朽木祥/作 片岡まみこ/挿絵

猫はねこでも、山で暮らすノネコが主人公です。
ノネコは訪ねてくれる人がいなくて寂しくてたまらない。とうとう自分で友達を探しにいくのですが、元気ハツラツな子犬に追われ、土管に逃げ込めたのは良かったのですが、つっかえて出られなくなってしまいます。その夜は満月。猫の主張を叫ぶ日(あたたかい寝床を!とか雨の日は23時間の睡眠をとる権利を!とか)なのですが、ノネコがはまった土管の上がその主張のヒノキ舞台なのでした。そして満月がのぼった空の下、猫の主張とダンスがはじまります。
土管にはまって足がとびでた状態のノネコを見物する猫たちの猫らしいちょっと奔放な行動がとても可愛らしい。「猫というものは、自分勝手に見えて、(実は)意外に思いやりも想像力もあるのだった」など著者の猫という生き物についての考察がところどころにあり、きっと猫好きな著者であろうと想像します。著者の作品の「かはたれ」にも猫がでてきますし。うんうんやっぱりだいぶん好きそうだな!
友達がおうちへ遊びに来て欲しい、というノネコの願いが叶い、たくさんの猫たちが山へ訪ねてくれるラストシーンがうれしい。勇気をだして山をおりた甲斐があってよかったよかった。テーブルには、シチュー、フィッシュケーキ・小エビのから揚げ、ミルクとチーズのプディングなどごちそうが並べられていて、おいしそうでたまりません。フィッシュケーキをおよばれに行きたいですね。版画の挿絵は片岡まみこさん。とてもかわいらしくて魅力的。おすすめな絵本。

他作品に・・・
「かはたれ 散在ガ池の河童猫」 小さな猫に姿を変えてやってきたカッパの子”八寸”と少女”麻”の物語。
「たそかれ 不知の物語」 かはたれの続編。 他にもたくさん。