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第150回 たくさんわらってあそぶいちにち

「森のおひめさま」 平凡社 2003年2月発行 22ページ
ジビュレ・フォン・オルファース(ジビレ・フォン・オルファースとも)/作 秦理絵子/訳
原著「Prinzesschen im Walde」 Sibyle von Olfers 1909年

森に住む小さなお姫さまのいちにちです。
風、朝露、苔、きのこ、星が擬人化され、子供の姿で描かれています。彼らがお姫さまのお世話をします。つゆのこたちが、髪をとかし着替えをし朝のみじたくをお手伝い。それがすんだらおいしい朝ごはんですよ。こけのぼうやたちがお茶やはちみつを用意。まんなかの子がお皿にのせているパンのようなデザートのような茶色ものはなんでしょう?パンを失敬しようとするリスを指差すこけの子どもが面白い。
からす先生と勉強を少し。真面目そうな表情のお姫さま「はやくおわんないかなー」なんて思っていそう。かしこくりこうにならなくちゃいけませんから、少しがんばりましょう。
さあ、勉強はおしまいにして、森のはずれまでこじか、うさぎ、りすなど動物たちとおでかけする遊び時間です。きのこぼっこたちがむかしのおはなしを聞かせてくれます。まあるいフォルムの赤いカサのきのこのぼうやたちのかわいいこと。
闇がせまりお家へ帰ります。星のこどもたちが星明かりをかかげ、お城へ向けて行進です。
「きょうも たくさん わらって あそんだ」そんな楽しい一日を終えて眠りにつきます。
夜には星のこどもがひとり見張りにたってくれる、というのが素敵。見守ってくれている安心感で気持ちが安らぎます。素敵な終わり方ですねえ。
挿絵のまわりを植物が縁どるように描きこまれていてとても美しいです。実や花がついた木々がなんともきれい。作者のオルファースさんが自然を観察し愛したのがよくわかります。子どもたちの絵も繊細で表情がかわいい。

作者のジビュレ・フォン・オルファースは、1881年プロイセン王国(昔のドイツ)で生まれました。子供の頃はおてんばだったのだそうです。草花、虫、星や風など自然を登場人物にするほどですから、外で元気に遊んだ子どもだったのでしょう。自然を愛する気持ちが伝わってきます。擬人化された自然のものたちの愛らしさにぜひ触れてみてください。
他の作品に、
「風さん」「ねっこぼっこ」「ちょうちょのくに」「ゆきのおしろへ」「うさぎのくにへ」が邦訳されています。

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第43回 道は続くよどこまでも

「ガッタンゴットン」 平凡社 2006年6月発行 36ページ
スズキコージ/著者

独特な挿絵を描かれるスズキコージさんの言葉のない絵本です。ヘラジカのような角のある生き物(二足歩行)が、ガッタン ゴットンと列車を運転しています。時々、駅を通過し、荷物が増えたり減ったり、乗客が乗り降ります。

ただただ、列車が行くのを見守る絵本・・なのですが、イラストがとにかく美しい。暖色系と寒色系の色の対比、そして白の縁取りアクセントや白いレールが続いているのが美しく見入ってしまう。登場人物たちの怪物的な造形もややグロテスクですがそこがたまらない。描かれる建物や・山の向こうに何かがありそうで、覗き込みたくなってしまう。
終点に近づくと、白の長い毛の生き物たち(四足歩行)がたくさん出迎えのようにあらわれ列車と並んで走るシーンが素敵。そして海へ到着。荷物や乗客もすべておりましたし、レールに車止めがあるので終点と思いきや・・列車は海へ乗り出します!!なんてこった!!! 最終ページまで行けば終点・・という思い込みを覆されるのもよかった。ヘラジカさんは、どこまで行くんだろう。道はどこまで続くのだろう。どこまでもどこまでも続いてほしい。いやあ良い絵本だった。