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第90回 奇妙な味

「ギャシュリークラムのちびっ子たち または 遠出のあとで」 河出書房新社 2000年10月発行
エドワード・ゴーリー/著者 柴田元幸/訳

エドワード・ゴーリーです。アメリカ・シカゴ出身、1925年生まれ。
ほそ~い線画でモノトーン、はっきりいって不気味な挿絵です。
頭文字AからZの26人のこどもたちが迎える悲惨な死を一文で描いた大人向けの内容です。小さな人にはちょっとおすすめしづらい本ですね。
例にだすのもちょっと怖いのですが血なまぐささが少ないのをふたつ。
「Wはウィニー さむいさむい氷のなか」「Zはジラー ジンをふかざけ」
挿絵と相まってこわいんです!「ギャシュリークラム」とは何か、副題の「または 遠出のあとで」の関連も不明ですし、表紙の骸骨男はなぜ傘をさしているのか、もうさっぱりわからない。
初めて読んだとき、かなり動揺したのを覚えております。ただただ、たんたんと26の死が描かれているだけなのですが、短い文章ながらその前後のお話が豊かに(というと誤解を生みそうですが)想像できる不気味さが興味深い、と思いました。癖になる奇妙な味。挿絵もとても独特です。背景や子供たちの衣装がヴィクトリア朝なのも死因とまたあいまってなんだか格調高く感じます。ちょっと不安な気持ちになるマザーグースの子守唄「ハッシャバイベイビー」の詩を思いだします。不気味ですが美しいと言っていいと思います。
この絵本とほかに数点しかまだ読んでいないのですが、この苦みある作風はほぼすべての作品に受け継がれているもよう。一体この苦みのどこに惹かれるのか判明させるため、今後もほかの絵本を読んでみたいとおもうのです。うーん、作者の思うつぼなのかも。
もしくはあんまり考えないほうがいい、あるいは考えなくてもいい ・・そんな絵本なのかもしれません。
絵本の最後に著者の略歴と訳者の解説が掲載されています。