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第183回 青い生き物たちをご紹介

「あおのじかん」 岩波書店 2016年6月発行 42ページ31cm
イザベル・シムレール/文・絵 石津ちひろ/訳
原著「HEURE BLEUE」 Isabelle Simler 2015年

青の時間とは、なんでしょうか。表紙をめくると、「いろいろなあお」が紹介されています。いろんな青に作者が自己流で名付けたもの。「こなゆきいろ」は、うすいうすい青~灰色なのですが、朝から寒くて吹雪いてるときってこんな感じかも。「うんどうかいのそらいろ」わたしが出かける時・大事な用がある時は雨になりやすいというジンクスがあるのですが、運動会のときにこんな空の色だとうれしいよなあ。「そらとぶえんばんのいろ」???とても濃い青、群青といった感じですが、出会えそうな空の色のことかなあ?「はればれとしたこころのいろ」運動会の空色と似ていますがやや白っぽい感じ。なんかわかるように思います。心配なんかなくって気分が良いと顔も空を向きますもの。
ほかにも「あかちゃんのぼうしいろ」「みずたまりいろ」「ゆめのいろ」「みずぎのいろ」「うんどうぐつのいろ」「にじをまぜたいろ」「はかまのいろ」「ふかいうみのいろ」~~うすい青から濃い青までいろんな青がありますよ。どんな青か、想像してみてください。
いろんな青を鑑賞したのち、本編がはじまります。

青の時間とは、日が沈み夜がやってくるまでのひとときのこと。ごく短い時間ですね。
この時間に活動をはじめる、活発になる生き物たちが紹介されます。気に入ったものを抜粋。
最初は「アオカケス」。羽の鮮やかな青さが美しい、頭にかんむりのような模様がある鳥です。青の時間の始まりを告げるのは、彼らです。
同じ頃、ほんのり青い「ホッキョクギツネ」、キリキリと冷えた極寒の世界を歩む。-70℃の世界でもちょっと寒いと感じるくらいだそうです。ちなみに夏毛に換毛すると別人。
おつぎは、「コバルトヤドクガエル」です。アオカケスと同じようにこちらもとても美しい。でも、カエルといえば緑のイメージが私の中では強いせいか、ちょっと微妙な心持ち。正直可愛いと思えない。きれいなんですが、毒持ちだし。
かぐわしい かおりを ふわっと はなつ「やぐるまぎく、ほたるぶくろ、わすれなぐさ、すみれ」お花もいろんな色がありますが、青系統のお花です。花がふわり香るのはいいもんです。
空はもう濃い藍色。すぐに暗闇となるであろう野原をブルーグレイの猫がおでかけです。
真っ暗な海の底では、「アオミノウミウシ」がヒョウモンダコにまた明日会おうね、とご挨拶。「青蓑海牛」と書きます。このウミウシ、不思議な造形をしています。胴体に手のひらを開いたような形のヒレ?4つと尾羽根のようなものが優雅に広がっています。羽が4枚ある鳥のよう。青い竜なんても呼ばれているそうですよ。初めてこんな生き物がいると知りました。こちらも毒あり生物!こんなにきれいなのに!
世界の青い生き物たちのご紹介でした。

繊細な線がとても細かにみっしり描き込まれています。青の補色のオレンジなど明るい色とを組み合わせ、カラフルで美しい色合いの非常にきれいな挿絵です。
イザベル・シムレールさんの他の作品もよろしければお手にとってみてください。
「はくぶつかんのよる」「シルクロードのあかい空」「ねむりどり」「ゆめみるどうぶつたち」「しぜんのおくりもの」「たびするてんとうむし」「イラスト図鑑 リーブル「樹木」(ナタリー・トルジュマン/文、ジュリアン・ノーウッド、イザベル・シムレール/挿絵 観察図鑑です)」

ナタリー・トルジュマン/文、ジュリアン・ノーウッド、イザベル・シムレール/挿絵 観察図鑑です。

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第156回 命を賭して北極圏への旅

旅がけっこう好きです。若き頃、気ままのんびりなバイク旅行をしたことがございますが、この「北をめざして」の旅は比較にならないほどの壮大さ。生き物たちの命を賭した旅の本、よろしければ手にとってごらんください。

「北をめざして 動物たちの大旅行」 福音館書店 2016年1月発行 52ページ
ニック・ドーソン/作 パトリック・ベンソン/絵 井田徹治(いだてつじ)/訳
原著「NORTH -The Greatest Animal Journey on Earth」 Nick Dowson, Patrick Benson 2011年

北極は南極と違って大陸がありません。(知ってました?わたし知らんかった。)寒いので海が凍りついています。これをアイスキャップといいます。あまりにも寒いのでホッキョクグマ、ホッキョクギツネ、ホッキョクウサギなどのわずかしか生き物しかいないんだそうです。北極点を中心に北極海およびその周辺の土地(半径2600キロ圏内)を北極圏と呼びます。
雪と氷ばかりの北極ですが、夏になると一日中太陽がしずみません。太陽に照らされ水と土が温められ植物が伸びはじめます。海底から栄養たっぷりの水があがり植物プランクトンが大発生。それを求めさらにさらにたくさんの動物たちが集まってくるんですね。寒い寒い場所が一転して食べ物が豊富になり、子どもも育てられるほど豊かな土地となるのです。
春、食べ物を求め、たくさんの動物達が北極圏を目指します。
メキシコからは、コククジラ。8,000キロメートルもの長旅です。しかも旅の間の8週間、何も食べないんだそうですよ。不器用な感じが愛おしいですね・・・ガンバレ!
アジサシは、な・なんと、地球の反対側の南極からですって。ニュージーランドからはオオソリハシシギ。中国からソデグロヅル。
カナダは、カリブーと狼。北の豊かな地を目指すカリブーを追いかけ、狼も北上します。長旅で疲れて弱ったカリブーを狼がいただきます。うーん被食捕食の厳しさを感じますね。
他にも、ニシンなどの魚、イッカクジュウ、アザラシ、ホッキョククジラ、ペンギン、セイウチ、シャチ、ジャコウウシなどなどなど・・・それはそれはたくさんの生き物たちで北極はいっぱい。生命を謳歌します。
やがて9月になると、日がさす時間が短くなり風が吹き気温が下がりはじめます。冬が近づいているのです。またお腹いっぱい食べ力をつけ、暖かい南へ向け長い旅にでるのです。

動物たちの挿し絵がとてもきれいで迫力あります。ホッキョクグマの目のやさしくて愛らしいこと(本物に近くに寄られたら怖いだろうけど)。限られた短い夏、草が萌えるシーンにはなんだかじーんとしてしまいました。

巻末ページは、環境問題について 訳者解説があります。訳者の井田徹治さんは、環境・開発の問題について取材しているジャーナリストです。
石炭や石油を使うことによって、人間は二酸化炭素を排出しています。二酸化炭素などで地球の気温が上がっているのです。北極圏の海氷もどんどん溶け出して小さくなっています・・このままですとホッキョクグマは2100年までに絶滅すると予想されています。もちろんホッキョクグマだけではありません。温暖化により、大かんばつ・大洪水・猛暑などの異常気象を引き起こし大災害が起こって、人間の生活にももちろん影響がでています。(気候変動など信じないなんてとんでもなことを言った政治家がいましたっけ・・ふと思い出しましたけど) 豊かな自然が長く長く維持されることを祈ります。