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第6回 スウェーデン発、ストレンジワールド行き。

「セーラーとペッカ、町へいく」(セーラーとペッカシリーズ1) 偕成社 2007年 スウェーデン
ヨックム・ノードストリューム/イラスト 菱木晃子/訳

このところ北欧ミステリを読んでいます。絵本も北欧モノを、と探していて発見した本です。スウェーデンの絵本です。あまりに不思議な読後感だったものですから、ご紹介したくなりました。

登場人物、「セーラー」は元船乗りの男、「ペッカ」は服を着て後ろ足と前足に靴をはいてる犬、なんです。
朝起きるとセーターが見つからなかったセーラーは町へ買いに出かけます。上半身は裸サスペンダー、といういでたち(寒くないの?!)。髪がのびたから散髪したい(犬が散髪?)というペッカとともに車に乗って出発したのですが、車から煙がでて動かなくなります(いきなり故障?!)。ラッパをなくしてピエロが泣いている(スティーブン・キングの「イット」思い出すわ)のに出会います。歩いてやってきた町には人間もいますが、うさぎ(これが?)のご夫婦ですとか なんともつかない不思議な造形の生き物たちもたくさんいます。いろいろな服を試着し、無事セーターを購入したセーラー(服屋のおねいさんがなかなか商売がお上手)。目的達成したセーラーはついでにタトゥー(絵本で刺青する主人公は初めてみたかも)をいれにいきます。最後に町で車の修理屋さんに修理依頼して家へ帰ります。ちなみにピエロのラッパは猿が勝手に持っていっていたのでした。

ざっとあったことを書くとこんな感じの絵本です。あるスウェーデン人の一日を描写した、という感じでさほど起伏にとんだお話ではないし、かなり独特な挿絵なので、こどもはこの絵本を読んで楽しめるのだろうか、スウェーデンらしさなのか、文化の違いなのか、絵本とはなんだろうか、と少し悩みます。作者のノードストリュームさんの本職は「現代美術家」であるそう。ははぁー、なるほどね〜。
いや、楽しい絵本なのですよ、ほんとほんと。嘘じゃないですって。なんというか、癖になると言うか。うーん、きっといろいろツッコミを入れて楽しむ絵本なのでしょう。
2作目の「いったいどうした?セーラーとペッカ」では、病気になったセーラーのため、犬のペッカがお薬を買いに町へいきます。セーラーは熱にうなされ悪夢を見るのですが、そのシーンが・・不思議というかコワい。シリーズ通して不思議絵本です。スウェーデンの日常を、怖いもの見たさでどうぞお試しください(ニヤリ)。と、おそらくそういう本なのだとおもいます、多分きっと。皆様もこの不思議さを味わいませんか。さあさあ、セラペカワールドへご一緒に・・・・・・・

セーラーとペッカは、全5冊のシリーズです。「セーラーとペッカの日曜日」「セーラーとペッカの運だめし」「セーラーとペッカは似た者どうし」



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第5回 恐竜を飼ってみる

「きょうりゅうのかいかた (岩波の子どもの本)」岩波書店 1983年3月発行
くさのだいすけ/文 やぶうちまさゆき(薮内正幸)/絵

まきとめぐみは動物好きのきょうだいです。
カメ・金魚・インコ・カブトムシを飼ってきましたが、もっと大きな生きもの(犬か兎)を飼いたいとおもっていました。
そうしたら、お父さんが恐竜(ブロントサウルス)の子どもを連れてかえる、という想像力の荒ワザです。
名前は、どんに決定。

どっから連れてきたんでしょうか。ワシントン条約とかにひっかかりませんか、だいじょうぶですか。そうですこれが、絵本だからこそできる恐竜との暮らし。
飼育小屋を建て、トイレの穴や水浴び池を掘り、予防接種を受けさせます。大工さんや農家の方やご近所の方々などのたくさんの人たちの協力で成り立っているのです。
そうですよねえ、全長10m・体高5m・体重15トンぐらい、という大きさの生き物を、個人で育てるのは難しいでしょう。
獣医師は恐竜を診察できる知識やワザをもっているのだろうか。毎日、草の葉1トンを食べますがそれを供給し続けられるのか。恐竜にとって町は暮らしやすいところだろうか。恐竜って暴れない?
など読んでいてたくさん疑問がわいてきますが、子供たちが恐竜のどんといると幸せそうなのがいいですね。
みんなで山の湖へハイキングに行くシーンは、とても楽しい。明日はどんと何をして遊ぼうかな。



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第4回 はたらくくるま

「のろまなローラー」 福音館書店 1979年
山本忠敬/作・絵

ブルドーザ、はしご車、ショベル、除雪車、ささら電車、などお仕事仕様の働く車って大きくてぶこつな感じがかっこいいと思います。のりもの絵本の第一人者の一人、山本忠敬さんの絵本をご紹介します。

ローラーくんはのんびり走っていますが、でこぼこの道をたいらにして他の車たちが走りやすいようにしているんです。ゆっくりゆっくりでも確実に仕事をこなしていくローラーくんを邪魔扱いする他の車たち。「どいたり どいたり」なんて言われてしまいます。(時代を感じさせる言葉です。)早いばかりが能じゃない。道を作るローラーくんの働きをば見よ!

1979年発行なので、走っている車たちや町並みが”昭和”なのですがそこもまた良く、描きこまれた風景を見るのも楽しい絵本です。
ちょっと仕事がのんびりな私は確実に着実に仕事するローラーくんに憧れます。尊敬する人誰?ってきかれたら「のろまなローラーくん」・・と答えられたらいいなーとおもっていますがちょっと気恥ずかしくて言えずにいます。

他の絵本作品は・・・
「とらっくとらっくとらっく」「しょうぼうじどうしゃじぷた」「とべ!ちいさいプロペラき」  他たくさん。
図鑑的読み物は・・・
「機関車・電車の歴史」蒸気機関車の発明から現代の電車になるまでの鉄道の歴史。子ども向けですが挿絵が美しく見応えあります! 姉妹シリーズに「飛行機の歴史」もあります。のりもの絵本の他に・・
「こうもり」こうもりの生態・暮らしがわかる!
「むかしのしょうぼう・いまのしょうぼう」江戸・明治・大正・昭和の消防活動や消防車の発達・歴史など分かりやすく絵で説明されています。



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第3回 ぐずるドラゴンがかわいらしい絵本

「もっかい!」 フレーベル館 2012年発行
エミリー・グラヴェット/作・絵 福本友美子/訳

 ぐずるドラゴンなんてありそうにない、のが面白いこの絵本。
幼いドラゴンのセドリックが主人公です。おやすみ前に、お母さんドラゴンが、絵本を読んでくれました。まだねむくないので、もっかい読んで、とせがみます。もっかい!という舌足らずな言葉も可愛らしい。セドリックではなく、母ドラゴンのほうが眠くなってきてしまい、読む内容が適当になっていくところが面白いんです。(本の挿し絵も適当になっていくのですよ。)ちゃんと読んでママ、とセドリックがいらだちはじめ、体がだんだん赤~い色になっていきます。可愛いんだけれど子供といえ、ドラゴンなだけあって愚図りが強烈です。怒り爆発! 強烈な炎をはいて、焼けこげが!(裏表紙を先に見ないことをおすすめします。)

 お子さんと一緒に読むととっても受けそう。おやすみ前には逆効果になりそうな楽しい絵本ですが、もしかしたら小さなドラゴンの登場する楽しい夢が見られるかもしれません。



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第2回 わたしの大好きなどろぼうさん

今回は、児童文学をピックアップしてみました。
ホームズよりルパンが好きなのは、子供の頃の愛読書がコレだったからとおもいます。

「大どろぼう ホッツェンプロッツ」  1966年
「大どろぼう ホッツェンプロッツ ふたたびあらわる」 1970年
「大どろぼう ホッツェンプロッツ 三たびあらわる」 1975年
偕成社  オトフリート・プロイスラー/著  中村浩三/訳  フランツ・ヨーゼフ・トリップ/挿絵

 全三巻のシリーズです。
新聞を騒がさぬ日はないという、大どろぼう ホッツェンプロッツ。
おばあさんのコーヒーひきを奪ったどろぼうを捕まえるべく、カスパールとゼッペルという少年二人が頑張るおはなし。(大どろぼうと名乗っているわりに、庶民的な物を盗みますよね。)ホッツェンプロッツの友人・大魔法使いツワッケルマンも登場。これもまた悪どい人で、ワクワクします。カスパールとゼッペルは、コーヒーひきをとりかえせるか?
第2巻は、脱獄したホッツェンプロッツをカスパールとゼッペルがおいかけます。おばあさんもとらえられてしまったり!します。ずる賢いおおどろぼうに知恵を絞ってわたりあう少年たち。さあどうするどうする。

 最終巻の「大どろぼうホッツェンプロッツ 三たびあらわる」では、
1・2巻で悪事を働いたホッツェンプロッツが、どろぼうを廃業するという、驚きの始まりです。今までががっつり大暴れしてきたものだから、どろぼう稼業をやめたいと思ってるのに信じてもらえないホッツェンプロッツですが、あるものを盗んだと疑いをかけられて・・。やっぱりびっくりすることに、カスパールとゼッペルがホッツェンプロッツの無実の証明に協力するんです。すごい展開ですよね~。
3巻の最後に挿絵がはさまれるのですが、この挿絵がすごくいいんですよ〜。(このイラストのある版とない版があるようです。)
第3巻のホッツェンプロッツの憎めなさがほんと大好き。1巻だけでなく、ぜひとも3巻まで読んでいただきたい。わたしのだいすきなどろぼうさん♡

 少女だったわたくしには日本とは違う、ドイツの風習や言い回し、フランツ・ヨーゼフ・トリップの独特な濃ゆ〜いイラストがとっても魅力的でした。1巻では、挿絵とともに(おそらく)作者のツッコミもはいっていて、これまたすごく楽しいんですよ。
そしてなんと言っても、食べ物! プラムケーキ、じゃがいものからあげ、ザウアークラウトとソーセージ、にんにくたっぷりキノコ料理、ハタンキュウのブランデー、アッペルシュトルーデル、山盛りのチョコレートドーナツ、シュトロイゼルクーヘンなど、馴染みのないドイツのお料理がおいしそうでたまりませんでした。「生クリームをたっぷりかけたプラムケーキ」ってどんなものだろう、少年たちが毎日食べたがるのだから、よほどのものだろう(ゴクリ)・・と思ったものです。

 小学低学年あたりから楽しめるシリーズと思います。とても面白いシリーズです。プロイスラー氏は ドイツの作家、1923年生まれ。わたしがドイツに興味を持つきっかけとなった物語なのでした。いつか行ってみたい国のひとつです。

プロイスラーの他作品に・・・
「小さい水の精」「小さいおばけ」「クラバート(魔法使いとその弟子のお話/長編)」「ユニコーン伝説(ゲンナージ・スピーリンの挿し絵がとてもとても美しい)」など、昔話・民話を題材にしたお話などたくさんかいておられます。