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第23回 どこいったん 関西弁絵本

「どこいったん」 クレヨンハウス 2011年発行
ジョン・クラッセン/作 長谷川 義史/訳

大阪生まれの長谷川義史さんが関西弁で訳した絵本です。
くまさんが大事にしていた赤い帽子がどこかへいってしまいました。ぼうし、どこいったん?といろんな動物たちにたずねてさがしまわります。
むだにぺらぺらしゃべる挙動不審のあやしい動物が一匹。ぼうしを取り戻したくまさん、そしてそのあやしい動物はいなくなりました、とさ。
読み終わった後、ちょっと意味がわからなくて、3度続けて読み返しました。わかった時、絶句しました。ブ、ブラック!
くまさんの無表情な目つきからしてちょっとこわいんですが、おとぼけな調子で話がすすみ、関西弁のおかげでブラックな笑いがかなり和らいでいるように感じます。
大人としては、ご紹介にちょっと抵抗がある・・のですが、こういうのを笑える心の余裕を持ちたいという思いにより、この投稿をアップしてみました。おーげさですが。
「どこいったん」「ちがうねん」「みつけてん」と、ぼうしシリーズは3冊でています。3冊すべて読んで、なるほどな・・という絵本。
この黒さ、よろしければどうぞお試しください。



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第22回 海賊になる!

「こうしてぼくは海賊になった (児童図書館・絵本の部屋)」 評論社 2006年発行
メリンダ・ロング/著 小川仁央/訳 デイビッド・シャノン/イラスト

海で遊ぶジェレミーと父さん・母さん・妹。
浜辺から突然、海賊たちが上陸しはじめる。その名も海賊アミヒゲ。歯を磨かなくてもいいし、野菜を食べなくてもいいし、食べ物をぶんなげても、くそいまいましい、とか言っちゃ駄目な乱暴な言葉を使ってもいいんです。なんて自由!なんて楽しい!こうして少年は海賊になるのです。
けれど寝る前にお話を読んでくれる人がいない。おやすみのキスもなし。どうしましょ?
歯磨きしないちょっと不潔でお肌が荒れて不健康そうな海賊たちの挿し絵がちょっと気持ちわるいのですけど、船長と手下どもの元気の良さがバツグンです。おっかしいなー、海賊ってこんなにかっこ悪かったっけ?と読みながら思います。描かれ方がリアルで笑っちゃう。



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第19回 みんなで家出

「いえでをしたくなったので」 ほるぷ出版 2014年7月発行
リーゼル・モーク・スコーペン/文 ドリス・バーン/絵 松井るり子/訳

おとうさんとおかあさんがケンカしていて、なんだかつまんない。よっしゃ、家出しようぜ!
兄姉弟妹の4人きょうだいと愛犬・愛猫をおともに、荷物をつめて出発します。素敵な場所を見つけて落ち着こうとすると、邪魔がはいります。次へ次へと移動して結局おうちへかえるのです。やっぱおうちがいちばん。きょうだい達それぞれも思う所あったか、少し成長した感じなのもまたいい。
両親が帰ってきた子供たちを出迎えますが、彼らの冒険を陰からこっそり見てるのじゃないかしら、そして子供たちも見守ってる両親がいることをうすうす知っているのでは、なんて感じました。だから楽しく家出し、意気揚々とおうちへ戻るのでしょう。
黒一色の挿し絵ですが、さびしくない、素敵な挿絵です。アメリカで1969年に発行された絵本のこと。



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第18回 こっそりどこへいく?

「こっそりどこかに」 長崎出版 2006年6月発行
軽部 武宏/作

唐突ですが、私は怪談が好きなんですよぉ〜。怖い絵本は多々ありますが、コレなぞいかがでしょう。
黄色のレインコートを着た子どもが、町を駆けていく。夕闇近づく時間、もうおうちへ帰らなきゃいけない時間なのに、何のため走っていくのか、わからなくてとても不安になり、ページをめくる手がとまらない。古い町並み、電柱の上に立つ黒い人影、ゆれる木々に人の顔が見えたり、繁華街ぽいところを歩くワケありそうな男と女、小さな箱にきっちり詰まった男に一緒に行こうと誘われたり、暗闇に住むものたちが走る子どもの前にあらわれる。
レインコートの子どもが夜を駆け抜けた理由がなかほどでわかるが、ラストにも驚きが隠されている。謎がとけると、怖いというより不思議さが強い絵本とおもいます。

 他作品に・・・
「のっぺらぼう」杉山亮/作 こちらも怖い怖いお話。古典怪談ですが、軽部氏の挿絵が怖くてたまりません。暑い夏の夜に読むと涼しくなれそうです。
「大接近!妖怪図鑑」はたんねんに書き込まれたリアルな挿絵が魅力的ですが、「いいないいな このおうち」のゆる〜〜いイラストの絵本もあり、そのギャップもまた面白いですよぉ〜。



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第17回 図書館にライオン。走ってはいけません!

今回は、マナーについて考えてみよう、の本です。

「としょかんライオン」  41ページ 岩崎書店 2007年4月発行
ミシェル・ヌードセン/作 ケビン・ホークス/絵 福本友美子/訳

私はネコ科の生き物が好きなので、ライオンと女の子が一緒に絵本を読んでいる表紙イラストに、すでにノックアウトです。いい表紙ですね~。

なぜかライオンが図書館にあらわれます。肉食獣たるライオンが捕食活動を行わないことに、読んでいて面食らいます。そもそもライオンが町中にいることに違和感がありますが、まあ読み続けてみましょう。
どうも、このライオン、絵本を読んでもらいたい様子。もっと読んで!と大声でうなってアピール。司書のマクビーさんは、追っ払おうとしますが、メリウェザー館長は、図書館のきまり 1.大声をだしてはいけません 2.走ってはいけません  このルールをまもるなら、別にいてもいんじゃない?と寛容な態度。次の日も早くからやってきて、ライオンは館長の仕事を手伝います。しっぽではたき掛けしたり、高いところにある本を取るための台になったり、読書中の子どもたちのソファになったり(私もそこにまざりたい・・)、本を運んだり、館長さんの封筒貼りをお手伝いしたり。絵本が大好きなライオンの献身的な様子に、もう可愛くてたまらなくなってきます。ネコ科のいきもの、バンザイ!
そして事件が起こり、ライオンくんは図書館に出入り禁止になってしまうのですが、閉館した図書館の前で雨にぬれ、悲しそうに佇むライオンが切なくて可愛くて、もうたまりません。うちに来いや!ってタテガミを引っ張りたくなります。
さあ、ライオンくんはどうなるんでしょうか、どうするんでしょうか。続きは、絵本をごらんください・・・・・
ライオンとメリウェザー館長さんの心の通じ合いに、何度読んでも目がうるんでしまう絵本です。