「ねこと王さま」 徳間書店 2019年12月発行 166ページ
ニック・シャラット/作・絵 市田泉/訳
原著「THE CAT AND THE KING」 Nick Sharratt 2016年

いまから少しむかしのお話、あるところに、王さまが一番の友だちのねこと立派なお城で暮らしていました。
ある日、お城をドラゴンに燃やされてしまったのです。お城は全焼しもちものはほとんど失って、召使いは全員やめてしまいました。お城には住めなくなったので小さなおうちに引っ越すことになりました。

いきなり王が城を失うというインパクトあるはじまりだしです。つかみはオーケーですね。
赤いじゅうたんの上を歩いたり、おいわい行事でのテープカット、みんなの前で話をしたり、頭から重いかんむりを落とさないようにしたりといった王さまらしい仕事しかできない王さま。「箸より重いものを持ったことがない」というやつですね。まあ王さまですからねぇ。ねこと王さまが二人だけで暮らすなんて、だいじょうぶでしょうか。ちょっといやいやかなり頼りない。

心配になりますが、王さまを支える友だちのねこが賢くてそのうえ働きものなので、安心です。おまけに、字も上手でパソコンも使えるし運転免許だって持っている、という優秀さ。このねこくんがいい味出してます。
フリーマーケットで家具・食器・時計などを買いにでかけたり、スーパーへ食料品を買い出しに行ったり、バスに乗るため列に並んだり、食器をあらったり、食事のためにテーブルを準備したり、いままでそんなことしたこともないわけです。とまどう王さまに、ねこがしっかり教えていきます。
以前の楽しかった王さま暮らしを思い出しては寂しくおもう王さまを、慰めるねこがまたイイ。

できることの多いねこが家事をメインに受け持って暮らしてはいますが、執事だとか召使いではなく、ねこと王さま二人は友だちなのです。支え合って暮らしているのがいいですね。家族とともに暮らすコツをおそわったような・・そんな気がいたします。
王政廃止?とか突っ込みたいところはあるのですが、ファンタジーとして楽しめます。暴れドラゴンを退治しないとか王が頼りないとか召使いの役目の使いまわしだとか意外な設定が楽しいです。最後の王さまのねこへの感謝のことばがイイ。

挿絵がまたかわいらしくて面白いです。フリーマーケットで買ったもの、スーパーで買ったもの、素敵な品々がこまごま描かれていて、これをながめるのが楽しい。
作者のニック・シャラットさんは、イギリスのイラストレーター。イギリス児童文学作者のジャクリーン・ウィルソン、ケス・グレイなどの挿絵をたくさんかいてます。文章もかいた児童書はこれが初とのこと。