「ツバメ号とアマゾン号 ランサム・サーガ1」 岩波書店
アーサー・ランサム全集版:1967年6月発行 487ページ
(新訳版 ランサム・サーガ岩波少年文庫版 上下巻:2010年7月 340ページ/332ページ)
アーサー・ランサム/作・さし絵 神宮輝夫・岩田欣三/訳
原著「Swallows and Amazons」 Arthur Ransome 1930年

ジョン・スーザン・ティティ・ロジャのウォーカー家の4人きょうだいが、イングランド湖水地方の湖で過ごす夏休みの物語です。(ほんとは、2才の末っ子の女の子がいますが小さいためお留守番。)
あれこれを禁止する大人たちから開放され、子どもたちだけで帆のある船をあやつり、湖にある小さな島でテントを張って、たきぎを集めてキャンプファイア、自分たちで釣った魚を調理し、戦争ごっこをして、自由な時間を満喫します。
1929年のお話なので、90年ほど前ですね。なんと昭和4年です。
物語のさいしょでは、末の男の子ロジャが、おうちの前で待つお母さんに向かって、帆船のマネをしてジグザグに道を走っています。すでに、ロジャは空想にはいっているんですね。
水の上では、向かい風を受けている場合、帆に風を受けて早くすすませるため右・左とジグザグに船をはしらせます。それを「間切る」というんですね。
センターボード、メンスル、フォアステー・・といったヨット各部の名前や船の操作方法などのカタカナがたくさんでてきますが、意味はわからなくてもまったく問題ありません。どうしても気になったら、章の最後の説明を御覧ください。

湖で溺れないか、風邪ひいたり、怪我したりしないかと、親としては、かなり心配です。
ウォーカー家のお母さんはおおらかで空想豊かな人。ジョンやスーザンの大きいきょうだいたちが小さい子たちの面倒をみて危ないことはしない、と信用しているからこそ、きょうだいが楽しめるのでしょう。
レモネードのことを「ラム酒」、コンビーフの缶を「ペミカン(冒険家たちの携帯保存食のこと)」、空想力のないアレコレうるさい大人たちのことを「原住民」などとよんだりしますが、おかあさんもそれにあわせておしゃべりします。子どもたちの空想につきあえる、素敵なおかあさんです。

こどもたちが乗る船の名前は、ツバメ号です。タイトルには「アマゾン号」ともかかれていますが、こちらは、ナンシーとペギイのブラケット姉妹がのっている帆船の名前です。
彼女たちと、互いの船をとりあう戦争ごっこがはじまります。リーダーを決める、けっこう大事な戦争です。風の向き、互いの位置、船を隠す場所などに工夫をし、千恵をしぼって競うのは、とても面白いです。

それからもうひとり、重要な役割の人物、ジム・ターナー。こちらも豊かな空想力を持つ素敵な大人です。ナンシイ・ペギイの姉妹のおじさんです。この夏は、小説を書くのに夢中で海賊ごっこをまったくしないので、ナンシイ・ペギイ姉妹がむくれています。オウムを飼っていて大砲のある屋形船で暮らしているので、「宝島」という小説にでてくる冷酷な海賊「フリント船長」と、ツバメ号きょうだいがあだ名をつけました。なかなかおもしろい役割を果たします。

心躍る夏休みの冒険です。楽しくて肩のこりがほぐれるような気がします、個人的な感想ですが。よろしかったらお手にとってみてください。

シリーズは、全部で12冊。新装版の岩波少年文庫ですと全24冊。
「2巻:ツバメの谷」「3巻:ヤマネコ号の冒険」「4巻:長い冬休み」「5巻:オオバンクラブの無法者(オオバンクラブ物語)」「6巻:ツバメ号の伝書バト」「7巻:海へ出るつもりじゃなかった」「8巻:ひみつの海」「9巻:六人の探偵たち」「10巻:女海賊の島」「11巻:スカラブ号の夏休み」「12巻:シログマ号となぞの鳥」
シリーズによって、ウォーカーきょうだいではない人が語り手になります。オオバンクラブのトムや、ドロシアとディックのD姉弟もすてきな子たちですよ~。