今回は、内田麟太郎さんをセレクトしてみました。表紙が大変インパクトがある絵本です。タイトルだけでは、さっぱり内容がわからないのがうれしいですね。大胆な挿絵とナンセンスな内容が相まって面白くなっている絵本、とおもいます。
「たまたまたぬき」 佼成社 2016年11月発行 32ページ
内田麟太郎/文 高畠那生/絵
いろいろなものに化けるのが上手な、たぬきのお話。
カエル、サボテン、10万人も社員がいる会社の社長、ジャンボ機のパイロット、横綱、西洋の歌姫、その前はゲタ。 ほんといろんなものに化けてますねえ。
何にでも化けられるので、タヌキは、自分が何者なのか、わからなくなったと言っています。
「おれは、誠にタヌキであろうか。タヌキにしては少し賢すぎるところが、ある」
タヌキの独白を、横で聞いているキツネのつっこみがちょいちょいはいるのも楽しい。
これまた、こっそり聞いていたカラスが、タヌキの傲慢さをあおるのです。
「お前は、今たまたまタヌキなだけだ。本当は、もっと偉大なものである。気づくのだ、おのれの偉大さに。思うのだ、ほんとうのじぶんを!」
ちょっと絵本とは、思えないほどのセリフでしょ。カラスの哲学的なうさんくささが好きですね〜。
タヌキは座禅を組み、思います。どんどん思います。本当の自分はなんなのか。
どかーん。と大出現する、タヌキの本当の姿。
これは、本を手にとってお確かめいただくのが良いかと存じます。(すごく・・・おいしそう。)
立ち聞きしていたキツネ、混乱してしまって、最後には寝込んでしまった、というラストが楽しい。
自分探し、をちょっと皮肉な感じに表現していてすごく好きです。でも食欲が旺盛であるということは、前向きであるということとおもいます。すごく大事で良いことなんじゃないでしょうか。(単純な感想でごめんなさい。)
・・気になることは、タヌキの「本当の自分」が何であるかは、文章では書かれていないのです。文章を書かれた内田さんは「何か」を指定なさったんでしょうか。それとも挿絵を描かれた高畠さんが、決めたことなんでしょうか。どちらかがお好きなメニューなんでしょうかね?それ結構気になります。