「お化けの真夏日(お化けシリーズ)」 BL出版 2001年8月発行 31ページ
川端誠/作
お化けが主人公の絵本です。お化けにおどろかされる子ども、ではなくお化けが主人公なのです。お化け屋敷に暮らすお化けたちの日常が楽しいです。そして美味しい料理を楽しむ宴の絵本です。
シリーズは今のところ6冊発行されています。「お化けの真夏日」「お化けの海水浴」「お化けの冬ごもり」「お化け屋敷へようこそ」「お化けのおもてなし」「おばけの猛暑日」
「お化けの真夏日」
おばけたちが過ごす暑い夏の一日。人間と変わりません。暑さをぼやいたり(大入道・青坊主)、クワガタ・カミキリ・トンボを捕まえ、かき氷を食べ、花火を買い(一つ目小僧)、スイカを買いに行って安くしてもらって喜んだり(ろくろ首)、スイカが冷えるのを待って昼寝したり(大入道)、夏休みの勉強をしたり、スイカを食べて涼んだり、庭に打ち水をして、お風呂(五右衛門風呂!)を沸かしたり、風呂上がりにビール(オバケ地ビール!しかもピルスナー、スタウト、エールと3種揃えてます!)を嗜む。
おや、大雪山(北海道の山です)の雪女から、クールお化け便が届きましたよ。暑中見舞いとして、大きな雪だるまを送ってくれたんです。こりゃあ涼しそうだ。
そして、みんなでながしそうめんをいただきます。ろくろ首がおそーめんを茹でると伸びちゃうので砂かけ婆が茹でる、という注釈が面白い。一つ目小僧たちが花火を楽しみます。
くーっ、仲間に混ざりたぁい。オバケ地ビール飲みたぁい。
「お化けの海水浴」
お化け屋敷の面々が今度は海へ。お化けオンリーのプライベートビーチです。人間が迷い込んだら恐ろしい目に会うそうです・・・。
一つ目小僧たちは、浜辺で大はしゃぎ。お化けたちも海に入る前には、準備体操です。特にろくろ首は首をグルグル、手首ブラブラ、足首クネクネとしっかり体操しています。砂かけばばさんのシックな水着がかわいい。ひょろけはウェットスーツを着込んでますよ、本格的ねぇ。
おいさん連中の大入道や青坊主は、日差しをさけてからかさの下で昼寝です。砂かけばばさんは、浜べで砂を採集中。ばばさんが撒くための砂を持って帰るそうです。手伝うひょろけ、優しいね。
そもそも「ひょろけ」というお化け、初めて知ったかも。目がぎょろりとしてベロがぺろーんと長くでた、ちょっと不思議な顔立ち。軽く検索してみましたがでてこないですねえ。
おや、ろくろ首が沖へ向かってます。へー、ろくろ首って泳げるんだと思ったら、首をぐーんと伸ばして海の底を歩いているんだって。えっ、準備体操の必要、あった?
鬼ヶ島から赤鬼青鬼が魚を、姉妹の共潜(ともかつぎ)はあわびやさざえを、それはそれはたくさん持ってきてくれました。他にもぞくぞくおばけたちがやってきます。
じつは今日は浜で宴会が開かれるのです。妖怪たちの交流会、どんな話するんだろう?
小豆とぎと小豆洗いが(同じ妖怪かとおもってましたが微妙にちょっと違うらしい?)さっそく料理にとりかかります。たっくさんの種類の魚やエビやアワビのお刺身、浜なべ、浜焼き・・うわぁ~魚づくしだぁ!たまりませんねえ。
すぐすぐ飲み始めたい大入道は、赤鬼青鬼に酒をすすめます。あれ、鬼たちの顔が白っぽくなって具合が悪そう。その酒の名前が「大吟醸桃太郎」「純米鬼ごろし」。そりゃあダメでしょう。
「お化けのおもてなし」では、東北のお化け・座敷わらしと袖ひき小僧が遊びにくるので、みんな張り切っています。酒好きの大入道が意外に活躍して、うどんを作ります。一つ目小僧たちの工夫をこらした竹で流しうどんです。鬼ヶ島産のお塩、北海道の小麦などこだわりの食材が、なんかもう否応なしに食欲をそそります、食べたくってたまらない。そして、小豆とぎと小豆洗いの夏野菜や魚貝の天ぷら!ああ~おいしそうすぎるぅ!
おいしいものを持ち寄って宴会したりと、怖い存在であるお化けがこんなにも楽しそうなのが、いいんですよねえ。雪だるまの暑中見舞い、おもてなしのための食材を送ってくれたり、お化けだって縁を大事にしている、そんな感じが素敵です。
しかし、前見返しを開いて見ますとドキリとします。そこだけちょっと怖い雰囲気があるのです。さすがお化け絵本。